キタン会新春講演会 講演要旨

(この記事は2021年1月9日にキタンホールにてオンラインで行われた新春講演会の講演要旨です。)
講演会の様子

キタン会新春講演会 講演要旨
村林 聡 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 社長
テーマ: 「産官学民のパートナーシップで日本のDXを」
~SDGsをSociety5.0の技術で達成する場としてのスマートシティ~

私は、山崎ゼミで金融論を学び、1981年卒業後、銀行にて長くシステム関係を担当しておりました。三菱UFJ銀行CIOを最後に退任し、三菱UFJリサーチ&コンサルティングに着任し、現在、内閣府の公文書管理委員会、防災情報ハブ、内閣官房のデジタルガバメントの委員をしております。本日は、最初に、MUFGのDXの取り組みをお話させていただき、本題の「日本におけるSDGsへの取り組みとDXの関連」、その達成の場である「スマートシティへの取り組み」を、海外事例を交えご紹介します。最後に「国・地方一体推進に向けて」で結ばせて頂きます。


1 SDGsとDX
日本全体のDXの説明に入ります前に、私たちの考えるSDGsとDXについて少しお話したいと思います。 SDGsにつきましては既に皆さまもよくご存じだと思いますが、 MDGsから発展し、2015年9月にSDGs17の分野、169のターゲットとして採択され、5年が経過しました。 SDGsでは、「成長・社会的包摂・環境保護」の調和を重視しています。 そして、昨今では「SDGsネイティブ」層が増加、社会に影響を与えつつあります。2019年の9月23日、国連におけるス ウェーデンのグレタ・トゥンベリ氏のスピーチはまだ記憶に残っていますし、 その後もCOPを始め活動を継続されています。 日本の企業活動においても、ワードとしては浸透の感があり、三菱UFJ銀行においても2019年8月にサステナブルビジネス室を設置しています。私も3年前からSDGsのシンボルマークをあしらったバッジをつけておりますが、最初の頃は、何かとよく質問を受けましたが、今は、ほとんど受けなくなりました。

2 「デジタル四方よし」を考える
日本のSDGs取り組み状況はというと、2017年が11位、2018年、2019年は15位で、2020年は17位と後退しています。上位国は欧州、特にデンマーク、スウェーデン、フィンランドと北欧が占めます。この後少しふれますエストニアも10位であり、デジタルガバメントの進んでいる国と相関があるようにも見えます。 日本が既に達成していると評価されたのが、目標4:「質の高い教育をみんなに」、目標9:「産業と技術革新の基盤をつくろう」であり、一方で、目標10:「人や国の不平等」、目標11:「持続的なまちづくり」を始め、まだまだ改善の余地が多いといえます。 SDGsは近江商人の「三方よし」と考え方が近く、昔から取り組んでいるという事をおっしゃる方もいらっしゃいますが、アナログではなくデジタルでもそうなのか、今一度考え、未来よしを加え、デジタル「四方よし」 で考えてみる必要があると考えています。

3 日本を取り巻く状況
世界の情勢は、第4次産業革命によるグローバル競争の激化、シェアリングエコノミーの進展、世界経済の中心の変化、気候変動、サイバーセキュリティなど大きなうねりの中にあります。 日本の情勢はというと、少子高齢化やインフラの老朽化は急激に進んでいますし、 都市の競争力、外国人材、若者、共助など新たな変化が予測されます。 これに加え、今回の新型コロナウィルスのような未知のウィルスへの脅威に備えていく必要性は言うまでもありません。「サピエンス全史」で有名なハラリ氏も、最新の著書で、選挙に立候補した政治家へ質問として、 「SDGs、そしてその先」を問うています。
最近では、コロナ後の世界として、Citizen empowerment, Global solidarity というまさにSDGsそのものを求めています。

このような情勢下、日本として特に注力すべき8つの優先課題を、5つのPに基づき、整理・分類してみます。
Peopleは、インクルーシブな社会、健康・長寿
Prosperityは、イノベーション、持続可能な国土・インフラ
Planetは、再生可能エネルギー、防災・気候変動、循環型社会、生物多様性・環境保全 Peaceは、平和と安全・安心社会
Partnershipでは、これらを実現する体制と手段です。
これらの課題を解決には、それぞれ単独の解決を目指すのではなく、「連携・整合性をとりながら、デジタル技術を駆使して、社会実装していくプラットフォームが必要であり、その場がデジタルガバメントを内包したスマートシティではないか」と考えています。まさに 日本全体のDXです。

4 SDGs達成に必要なDX 
日本は新たな社会としてSociety5.0を目指しています。 狩猟時代、農耕時代、工業時代、情報の時代の次は、サイバー空間とデジタル空間を融合させたシステムにより経済発展と社会課題の解決が両立する新たな人間中心の時代です。 これはまさにデジタルテクノロジーの活用により、SDGsの目標に導く日本のDXです。デジタルガバメント・スマートシティへの取り組みは、Society5.0で提案されるテクノジーで実現する社会そのもの、だと考えます。そこで我々が認識しないといけないことは、日本はSociety4.0の情報革命で後進国となってしまったという事をしっかり認識し、5.0で再び世界をリードする先進国となる事だと思います。

先進的な諸外国、エストニア、バルセロナ、デンマークなどには我々が学ぶべき点が多くあります。

5 SDGs,×Society5.0× スマートシティの関係
昨年、スマートシティの取り組みを官民連携で加速するために、「スマートシティ官民連携プラットフォーム」が設立されました。 そして、テクノロジーを活用し、市民のQOLを高めるプラットフォームづくりに必要なスマートシティレファレンスアーキテクチャが考えられています。 ここでは、行政データ・住民データなどのデジタルガバメントの機能も組み込んでいく必要がありますし、都市OSを標準化し、都市間のインターオペラビリティを高める必要もあります。そして、私たちは、これらの実装を通じ、Society5.0で目指す、Well-being、デジタルインクルージョン、信頼性を大切にする社会を実現していかなければなりません。

今、各府省では大変多くのスマートシティ関連事業への取り組みが行われています。そしてそれぞれの取り組みは、個々に先進的なものも多く、今後の発展に期待したいところではありますが、このままバラバラに進んでいってよいのでしょうか。どう纏めていくのか課題だと考えます。そんななかで、会津若松市の取り組みは、一日の長があります。震災復興からスタートし、会津創生八策、市民中心のエコシステム、都市OSの実装ときちんとしたロードマップを作成し取り組んでいます。

日本の取り組みを加速させる取り組みとして、一般社団法人スマートシティインスティテュートを立ち上げ活動しております。ご興味があればご入会頂ければと思います。

6 スマートシティの国・地方一体推進に向けて
2019年末に、デジタルガバメントの実行計画が、閣議決定されました。
・実現のためのグランドデザインの策定
・政府CIOによる一元管理 注)政府の情報システムのみが対象
・マイナンバーカードの普及、活用
・地方自治体のデジガバ推進、民間手続きの推進
等が書きこまれていますが、まだまだ具体化、強化が必要な内容です。また、コロナ対策でも明らかになったように、更なるスピード感を持った推進が必要です。実行計画の中でも重要なグランドデザインの中身ですが、2030年を念頭におき、行政サービスの在り方とそれを支えるシステム・データの整備の方向性が纏められています。
実行計画は、2020年末にコロナ禍で露見したDXの遅れを取り戻すべく、各種提言を反映し、デジタル庁の発足を踏まえ、より踏み込んだ内容に改定されました。

7 最後に
本日のテーマである国・地方一体となったデジタルトランスフォーメーションの推進について纏めをするにあたり、ここでもう一度、デジタルガバメントの進化の過程を整理してみました。
DG1.0では、それぞれの業務は、電子化で行われていますが、やりとりは、基本全て書類中心の申請や交付です。従ってコミュニケーションも対面、郵送が中心です。
DG2.0では、申請や交付が電子的になりました。
DG3.0では、申請は一度だけ電子的に行うとデータ連携で必要なところに反映されます。但し、単発の申請ベースです。
DG4.0では、全てのサービスがクラウドで連携し、一度、実施したい事を申請すると関連する全ての処理が行われます。

我々はまさにDG4.0を目指すべきです。これまでのデジタル化ではなく、DXだと思います。私たちが考えるDG4.0を実現するプラットフォームは、政府の推進するデジタルガバメントプラットフォームとスマートシティプラットフォームをクラウド・オープンAPI・オープンデータによりワンストップ化する国・地方・民間一体のプラットフォームです。デジタルガバメント、スマートティにシームレスにアクセスできるポータルがあり、デジタルガバメントプラットフォームは、スマートシティプラットフォームと相互に連携します。 市民は、ポータルから一元的に様々な行政サービス・市民サービスを受ける事ができます。

これらが普及するためにも、デジタル共通ID が必要です。マイナンバーカードの有効活用とその普及の為に官民あげての取り組みが望まれます。 スマホなど住民の操作性のよいデバイス、認証手段はもとより、銀行口座との接続、行政事務の代行などの検討も必要だと考えます。 銀行口座との接続が、コロナのような事態でも効果を発揮します。

都市OSを標準化して、スマートシティを一体推進する組織。そして、デジタルガバメントとスマートシティを一体で進める協議会、ここが全ての司令塔になるといいと思います。そして、これらの実装においては、産官学民で進めるPFIなども検討する必要があると考えます。そうすることにより、日本の統一的なデジガバ・スマートシティプラットフォームが実現するのではないかと思います。 そして、この実現を通じ、日本が多くの課題を解決し、SDGsの目標を達成することに貢献できるものと考えています。